競馬(ギャンブル)と心理状態について 行動経済学で分析してみよう


今回は競馬(ギャンブル)を楽しんでいる人、私も含めてですがどのような心理状態にいるのでしょうか?
「競馬で勝ちたい」、「競馬をうまくなりたい」と思う前に、自分の心理状態を行動経済学から分析してみましょう。
最大の敵は自分自身です。
なぜ競馬をするのか?

競馬というのは賭け事(ギャンブル)です。
私は賭け事は良くないことだと子供の時から教わってきましたが、今ではお金を賭けながら競馬を楽しんでいる自分がいます。
- 馬が好き
- レースを見ているだけでも楽しめる
という入り口から競馬を始めた方もいるかと思いますが、本質的にはお金を失うリスクがあるのに関わらず、なぜ私も含めて競馬を楽しんでしまうのでしょうか?

熱くなったら負けという言葉もあるとおり、どういう心理状態なのかを理解することによって、冷静に競馬を楽しむことができると考えています。
競馬(ギャンブル)を行う行為の目的について
私自身、競馬は他のギャンブルと違って感動することもありますし、趣旨が少し違うかなと思いますが、ギャンブルをなぜ私たち人間が行うのかを心理学の目線から見て行きたいと思います。
賭博行動における心理学研究をしているLadouceur and Walker氏らの発表によると、ギャンブルをなぜするのかについて次の2点を挙げています。
- 競馬(ギャンブル)で味わえる心理的興奮が目的
- 競馬(ギャンブル)によって得られる短期的な利益が目的
心理的な興奮については一般生活の中では味わえないもので、特に競馬の場合はG1などの定期的な大きいレースも興奮させる要件の一つになっていますね。

ポイントは2つ目の短期的な利益が目的という点です。
双曲割引から短期的な利益が目的を分析
双曲割引というのは行動経済学の言葉で、「遠い将来なら待てるが、近い将来ならば待てない」ということです。
例えを作ってみますが、
- 半年経ったら5000円を渡すが、半年と1日待てば6000円渡す
- 今すぐに5000円を渡すが、明日まで待てるなら6000円渡す
どうでしょうか?
1の場合は元々お金が貰えるのが半年先ということなので、1日の遅れで1000円プラスになるのであれば、当然1日待って6000円を貰うはずです。
2の場合に関しては、人によっては今すぐに5000円もらいたいと思う人がいると思います。
これは人間の反応として正常の反応で、人は「今すぐに行動できることを最大限に評価し、大きな利益が得られることがわかっていても待つことを低く評価する」生き物ということです。
- 競馬の勝ち方が身につくまではエア馬券または少額馬券で勉強し、勝てる方法が確立できてから賭け金を上げることがわかっていても、誰かの予想を真似れば勝てるかもという安易な行動をする。
- 時間をかけて期待値の高い、または狙える穴馬が出てくるまではレースを見送ればいいことがわかっていても、たくさん馬券を買ってしまう。

しっかり意識やルール作りをすることから始めていきましょう。
プロスペクト理論を学んで、自分自身の心理状態を冷静に分析する

プロスペクト理論とは、先ほどの双曲割引と同様に行動経済学の意思決定モデルの一つとして有名な理論です。
内容は複雑なので一言で表現すると、
- 現在の状況下において、負けないように選択しようとする
ということ。
「当たり前のことでしょ」と思った方も多いと思いますが、ポイントとなるのは現在の状況下においてという点です。

例を挙げてみるので、一緒に学んでみましょう。
このようなゲームがあったら参加しますか?
- サイコロを振って偶数が出れば10万円もらえる
- サイコロを振って奇数が出れば5万円払う
- ゲームに参加しなければ、1万円もらえる
期待値の面でいうと回数をこなせば期待値的にはプラスなので、たくさんやった方がいいのは間違いないです。
ただ、ほとんどの人はノーリスクで1万円貰えるのであれば、ゲームに参加しないことを選ぶと思います。
今回のゲームの場合は現在の状況が示されていなかったので、多くの方が安定の1万円を選ぶと思いますが、次の場合はどうでしょうか?
「現在5万円の負債を抱えている」
5万円の負債を抱えている現在の状況下であれば、大半の人が負債を無くすようにゲームに参加するはずです。

これは損失回避性といって、得をすることよりも損することを最優先に回避しようとする正常な心理行動の一つです。
プロスペクト理論が競馬に影響する部分とは
プロスペクト理論の内容を勉強していて勘のいい方は気付いたと思いますが、競馬で一番プロスペクト理論反映されやすいのが最終レースです。
競馬(ギャンブル)の本質上、負けている人の方が勝っている人よりも遥かに多いので、今回の記事のような行動経済学の知識が無いとプロスペクト理論の通りの行動をしてしまいます。
- 前半の1-6Rで負けているので、後半の7-12Rは穴を狙う
- メインレースで大きく外してしまったので、最終レースで負債の回収を狙う
- 土曜日の負けを、日曜日に取り返そうとする

このプロスペクト理論の影響で穴馬が過剰に売れることを「穴馬バイアス」といい、傾向としては土曜日よりも日曜日、前半レースよりも後半レース、最も傾向が強いのは最終レースと覚えておきましょう。
穴馬バイアスについては、こちらからご覧ください。
競馬をやっていると起きやすい行動集

ここからは行動経済学を用いて、競馬をやっている時に起きやすい注意が必要な行動について簡単に書いていきます。
先ほどのプロスペクト理論もそうですが「今の自分がなぜこの行動をしたのか」この理由がわかれば対策できますし、何より馬券を買っている人の行動がどういう原理で動いているかを理解できると馬券戦略に応用できます。

ギャンブラーの誤謬
合理的な根拠が無いのに関わらず、今までの経験などから確率や予測を歪める行為です。

- 今日の勝ち馬は1番人気が多いから、これからも多くなりそうだ。
- 昨日は堅すぎるレースが多かったから、今日は荒れそうだ。
私もオカルトも含めて競馬を楽しむタイプですが、根本的な理論や考え方だけは揺らいではいけないと思っているので、オカルトに対しては楽しむ程度で付き合っています。

ハウス・マネー効果
大きな払い戻しがあった時に気が大きくなり、大幅なリスク行動をとってしまうこと。
競馬で考えると1R目に大きめの配当が当たったので、残りのレースは賭け金を2倍にするなどの大胆な行動です。
私も経験がありますが負けている時よりも勝っている時の行動を注意しないと、浮いているお金が全く残らないので毎週毎週負け続きになります。

メンタルアカウンティング
金銭に関する意思決定をする際に、無意識にたくさんの勘定項目を設定して判断を単純化すること。
プロスペクト理論と少し似ていますが、1レース目から馬券を購入したレースに関して私は全て記録しています。
このような細かく1レース毎の券種や資金配分、購入金額などを記録していても、土日の開催だけで勝った負けたを判断しようとしてしまい、結局意志が弱いと負けている場合にはプロスペクト理論のようにルールを自ら破ることになります。

1週間程度では確率も収束しないですし、収支も気にすることもないので、勝ち負けという単純なもので判断しないよう気を付けましょう。
サンクコスト効果
その投資したものにかけた時間やお金が無駄になること避けようとし、引くに引けない状態に陥ってしまい、判断を誤ることです。
パッと思いついたのはストック馬を追っている時も同様で、サンクコスト効果で引くに引けずにドツボにハマる可能性があります。
ストック馬を追っている時に今までその馬に対しての投資金額がわかっているので、回収できるまで追うという基本的な考えに固執していると間違いなくやられます。
「ストック馬だから」、「何度も買ってるから」という理由だけで買うのは根拠として不十分ですし、能力や適性の面から狙える状況に無いのであれば狙わない、またはストック馬から外すという決断が重要になってきます。
また使ってはいけないお金で馬券を買っている時もサンクコスト効果の影響が大きく、全額回収するまでは引くに引けない状況になってしまうので、冷静に判断なんかできる状況でないのは誰でもわかります。

確証バイアス

自分の仮説を確認する時に自分の意に沿った理論を過大に評価して、真逆の理論や情報を全く評価しないことです。
予想ファクター関係だとこれを非常に良く目にするのですが、血統は使えないなど血統を全く知らない方が声をあげていたりします。
それ以外にもレース映像分析が一番勝てると信じている方などは、それをしていない方は負け組と全く他のファクターを評価していない行為も当てはまります。
仮説を立てて検証することは競馬を研究する上で非常に大事なことですが、正しい評価ができないと全く違う方向に行ってしまいます。

認知的不協和
自分の中で矛盾ができると、正当化させようと考えを変えて無理やり矛盾を解消する行為です。
- これで勝てるはずなのに負けてしまった、今日は馬場が悪かったからだ
- この予想家に乗れば勝てるはずなのに負けた、東京は調子悪いようだ
- 使っちゃいけないお金が無くなったけど、楽しませてもらったから大丈夫
「これで勝てる」、「これなら当たる」という理論や考えが崩れると、無理やり原因を作り出して解決していませんか?
やっぱりどういうものに関しても根拠が必要になるので、勝つための理論や考えが崩れた時も負けを認め、原因がどこにあったかをしっかり振り返ることが重要です。

現状維持バイアス
現状を変えるメリットよりも、現状を変えるデメリットの方が大きいと感じてしまうこと。
競馬で置き換えてみると特定の予想ファクターを何年も研究していて結果が伴っていないが、他の予想ファクターに移るのなら最初から研究しなおしで膨大な時間がかかるので、このまま続けてみようと考えることですかね。
この現状維持バイアスの一番のデメリットは成長を止めやすい点だと個人的に感じていて、現在の状況を変えるメリットの方が遥かに大きいことが多いことを理解するのが最大の打開策です。
どの予想ファクターも時間はかかりますが複数のファクターを組み合わせる方が精度も高くなりますし、ファクター以外に関してもどういう状況においてもチャレンジすることがプラスに働きやすいと思います。

競馬と心理状態について 行動経済学で分析 まとめ

今回は競馬(ギャンブル)をやっていると非常に関係のある、心理変化について興味があったのでまとめてみました。
どういう時でも一番の敵は自分自身であり、いかに冷静に物事を考えて判断できるがポイントとなりそうです。
いかに優秀な予想があって、いかに優秀な馬券構成が出来ていても、状況や環境によって全てが流れてしまうのは非常にもったいないですからね。
今回の記事内容なほんの一部なので、また時間があったら他の行動経済学についても色々記事にしてみたいと思います。