競馬初心者でも分かる調教の狙いと評価 栗東トレセン編

2021年2月16日調教坂路, 栗東, 栗東トレーニングセンター, 栗東トレセン, 調教調教, 栗東, 栗東トレーニングセンター, 栗東トレセン, 調教

馬 冬 ハミ
竹之内
竹之内
どーも、竹之内です。
今回は調教コース紹介記事ということで栗東トレーニングセンター、通称栗東トレセンについて解説していこうと思います。
以前書いた美浦トレセンについての記事も調教コース紹介に含めて、基礎知識編で説明できなかった部分も補足していたので、今回も併用調教や追い切り本数についても書いてみようと思います。

栗東トレーニングセンターとは

引用元:栗東市観光協会

栗東トレーニングセンターとは滋賀県栗東市御園1028にある関西のJRAトレーニング施設です。

美浦トレーニングセンターの記事にも少し書きましたが、関東と関西のトレーニングセンターの成績でみると、関西にある栗東トレーニングセンターの方が成績が優れています。

その理由として調教コースの種類としては美浦トレセンの方が北と南に調教馬場があるのでコース本数が多く優れているように思いますが、後述する栗東の坂路が好成績を生み出していると言っても過言ではありません。

竹之内
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栗東トレセンに対抗するために美浦トレセンも2021年現在、栗東トレセンを参考にしながら大規模な改修をしている最中なので、大規模改修が終わった際にどのように成績差が出るのか気になるところですね。

美浦トレセンのコース紹介や改修についての詳細については、美浦トレセンの記事の方に書いていますので興味のある方は合わせてご覧ください。

栗東トレーニングセンターの調教コースとは

栗東トレセンの調教コースは美浦トレセンと違い、大きく分けて一つのトラックコース(フラットコース)と坂路コースの2つになっています。(プールなどは栗東、美浦それぞれにあります。)

ここからは競馬新聞やインターネットで調教欄を見る際に、コースの略称や調教コースの特徴、また調教コース別の調教参考タイムなどを記載していきます。

竹之内
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調教タイムについては以前の記事にも書いていますが、参考程度に見ることが大事だと私は感じているので、調教パターンや追い切り本数、追い切りの強度など、普段の調教パターンとの違いなどに注目して見てみると狙いがわかったり、馬券購入の参考になるかと思います。

また、ここからは調教の基礎知識編を読んでいることを前提に書いていきますので、まだ読んでいない方は初めに読んでいただけるとわかりやすいかと思います。

栗東フラットコース

栗東フラットコース(トラックコース)はコースの種類が5つあり、その中で路盤が違う部分も含めて分けてみると、調教コースは6種類あります。

トラックコースの最内からAコース、Bコースと言う風に分かれていて、美浦トレセンでも書いたようにアルファベットがAから進んでいくに従って、外側の調教コースになるので結果的に1周が大きい調教コースとなっていきます。

コースの種類としては、

  • 栗東Aコース(栗障)
  • 栗東Bコース(栗B)
  • 栗東Cコース(CW)
  • 栗東Dコース内柵側(栗芝)
  • 栗東Dコース外柵側(DP)
  • 栗東Eコース(栗E)

となっていて、コースの構成的には美浦トレセンと同じような調教コースの種類になっています。

栗東Aコース(栗障)は馬場の最内にあるコースで、障害のための調教コースです。
1周1450mで幅員20m、障害レースに出走するためには障害試験をパスする必要があるのですが、障害試験自体はこの栗東Aコースで行われます。
試験内容としては障害を真っすぐ飛ぶことができるか、1周のタイムが基準タイム以内に入っているかを見られるので、調教欄から1周のタイム、調教映像から障害の飛び越え方を評価することができ、障害レースを狙う際は栗Aの調教欄が必須です。

栗東Bコース(栗B)ダートの小回り調教コースで、1周1600m幅員20mとなっています。
重賞に出走する馬の最終追い切りだけで見ると、小回りコースのせいなのかあまり使われることが少ない栗東Bコースです。
ただ小回り右回りのダート調教コースなので、小倉競馬場や福島競馬場のようにコンパクトな競馬場への適性が十分にあり、新馬戦や未勝利戦などの下位クラス時には要注目です。

栗東Bコースの調教タイムの基準としては、6F81秒、5F66秒、4F51秒、3F37秒、1F11.7秒で考えています。
ただ、調教タイムは早いタイムを出そうと思えば出せるので、調教映像や加速ラップをしっかり踏めているかを重点的に見て評価するのがおすすめになります。

竹之内
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美浦トレセンでもそうですが小回りダートの調教コースでは、コーナーリングがうまい馬かどうかの判断にも使えるため、調教映像からどのようにコーナーを回っているか、しっかり手前を変えて走っているかなどを見てみましょう。

手前替えについて気になる方は、こちらも合わせてご覧ください。

栗東Cコース(CW)

ウッドチップ

栗東Cコース(CW)ウッドチップ馬場で、坂路の次に一番調教が行われる調教コースです。

1周1800mで幅員20mの調教コースとなっていて、トラック調教の主流馬場であるウッドチップは人気に伴い、最終追い切りで使った場合には厩舎の調教パターンにもよりますが、優秀な勝率と回収率を最もたたき出しています。

最も栗東Cコースが最終追い切りで使われる最大の要因は3頭併せができる点で、G1などの重賞を勝ってきた馬は最終追い切り栗東Cで3頭併せが定番にもなりつつあります。
3頭併せの場合は2頭併走よりも多彩なパターンでフォーメーションを組むことができ、出走する馬の脚質や不安点を補う、それとは逆に闘争心を高め、得意な点を伸ばす目的で使われます。

3頭併せの場合でも2頭併せのように逃げか追いスタートのどちらか、最後は先着できたか、左右から挟まれるフォーメションの場合は臆することなく走れているかなど、馬券に直結するヒントが調教映像や調教欄から読み取りやすいです。

竹之内
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栗東Cコースの調教タイムとしては、6F83秒、5F67秒、4F52秒、3F38秒、1F12秒を基準としています。
スタミナを強化するために使われるコースでもあるので、途中息を入れてラップが落ちることもありますが、しっかり息を入れた後に加速ラップを踏めているか(加速幅も確認)で評価してみましょう。

また現在行われている美浦トレセンの大規模改修も、栗東のウッドチップは右回り左回りが可能な点を参考にし、現在は美浦トレセンのウッドチップコースも条件によって右回り左回りが可能になっています。

栗東Dコース(栗芝、DP)栗東Eコース(栗E)

栗東Dコースは内柵側と外柵側で路盤が変わり、内柵側は芝で1周1950m幅員14外柵側はニューポリトラックで1周2038m幅員14mとなっています。

芝コースの栗芝はニューポリトラックコースができる以前、ウッドチップコースが雨で湿った場合に使われることが多くありましたが、近年ではダート馬が芝の適性を確認したり休養明けで走る際に芝コースで感触を確認するなど、あまり使われることが少ない調教コースです。
どうしても芝のコースは路盤からの反発力が強いので、脚への負担が大きく調教ではあまり使われない印象があります。

外柵側のニューポリトラックコース(DP)は全天候型と言われているだけあって、ウッドチップコースが水分を含んでいる場合や雨天時は多く使われている調教コースです。
ただニューポリトラックの場合は基礎知識編でも書きましたが、追えば追うほど早い調教タイムが出るので、私の場合は調教タイムは一切見ません。

竹之内
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調教映像からの走法や馬の気合の入り方などの確認、また調教パターンの確認程度で見ていて、ニューポリトラックを調教で走っているから勝率が高い、回収率が高いなどの顕著なデータも無いので一番評価が難しいコースだと感じています。

栗東Eコース(栗E)は栗東Bコースと同様に、ダートの調教コースです。
1周2200mで幅員30mあり、他の調教コースよりも広いのが特徴で、ゲートの試験が行われるコースとしても有名です。

追い切りの評価するポイントとしては栗東Bコースよりもトラックの外側にある調教コースのため、コーナーが緩く直線も長くなることを頭に入れておきましょう。

竹之内
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調教評価で最も大事にしているのは調教パターンや調教映像なので、なぜ栗東Eコースで調教をしているか(BコースではなくEコースの理由など)を考え、普段の厩舎パターンとの違いにも注目して見ましょう。
やっぱり一番大事なのは調教映像からの走法と勢い、ダイナミックな走りだと感じています。
調教タイムで判断するべきは正確なタイムが出やすい、坂路です。

栗東坂路コース

引用元:JRA

いよいよ栗東坂路(栗坂)についての解説に入っていきたいと思います。

美浦トレセンとの最大の違い、成績の大きな差を生んでいるのは坂路の差です。

美浦トレセンの2021年2月現在の坂路は美浦トレーニングセンターの記事でも紹介していますが、前半が緩やかで後半にようやく坂による抵抗がある設定になっています。

それに対して栗東坂路は断面図を見てもらえばわかりますが、坂路のスタートからしっかり傾斜がかかっていて、強い負荷をかけることができるのが最大のメリットす。

竹之内
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スタートしてから2%の坂から始まり、後半は3.5%の傾斜があるので常に負荷がかかりやすいことがわかりますね。

基礎知識編と同じ内容になりますが幅員が7mしかなく、かなりの人気の調教コースということで、調教映像を見ていても馬が入り乱れているのがわかるかと思います。

最終追い切りとして使っている厩舎も多数でありながら、キャンターで軽めに坂路で負荷をかけている馬もおり、人気コースということで多数の馬に囲まれて調教を行うことも多頭数に慣れるという点でプラス要素です。

栗東坂路の調教タイムについて

栗東坂路の調教タイムは美浦トレセンと同様に、バーコードで計測しているため、トラックコースのように媒体によって調教タイムが変わることが無く、正確なタイムが示されています。

栗東坂路の基準タイムとしては4Fで53秒、ラスト1Fで12.5秒で考えていて、栗東坂路は負荷が強い分タイムが出にくいので仕上がり具合を評価するのには最も適しています。

坂路の場合は調教タイムが正確なので加速ラップの踏み方も含めて参考にすることが可能ですが、調教する騎乗者によって大きくタイムが変わるので注意が必要です。
特に今まで調教助手や調教厩務員で同一の方が乗っているのであれば、今までの最終追い切りなどのタイムとの比較することができますが、騎手が乗った場合は当然体重が軽いので調教タイムも早くなりやすいと覚えておきましょう。

ハローが調教タイムに及ぼす影響とは

栗東坂路の調教タイムで大きく影響を及ぼすのが、ハローと呼ばれる整地作業のタイミングです。
どこの調教コースでもハロー掛けと呼ばれる整地作業があるのですが、栗東坂路の場合は

  • 追い切りが集中する水、木曜日は調教開始から1時間と2時間20分後の2回
  • その他の曜日は調教開始から1時間半後の1回

にハロー掛けが行われます。

ハロー掛けで整地が行われるということは、馬場が綺麗な状態なので当然怪我のリスクが少なく、しっかりと追い切りができるため多数の馬が殺到します。

特に馬場が綺麗な状態なのは開門直後とハロー後になるので、評価のポイントとしては、

  • 馬場が綺麗な競走馬が殺到している状態で調教タイムがしっかり出ているか
  • ハロー前の馬場が荒れている状態で調教タイムが出ているか

竹之内
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前者の場合は馬郡に入っても臆することなく走れると評価できますし、後者であればタフな馬場であってもしっかり走れると評価ができますね。

ウッドチップの入れ替えと雨天時の評価

栗東トレセン、美浦トレセンの坂路は共にウッドチップを使っているのですが、ウッドチップというのは雨による影響も大きく受けやすくなり、栗東坂路に関しては雨天時には全体時計が2秒ほど遅くなることがあります。

またウッドチップの入れ替え時にはウッドチップの最大のメリットであるクッション性が抜群の状態なので、調教タイムとしては遅くなる傾向です。
ウッドチップの入れ替え作業から日にちが経ってくるとチップが少しずつ崩れていくので、調教タイムはいつも通りのタイムとして判断できます。

  • 雨天時
  • ハロー時
  • ウッドチップ入れ替え時
  • 騎乗者

によって大きく調教タイムは変わっていくので、そこの部分をしっかり整理してから坂路調教の評価をしていきましょう。

トラック調教、坂路調教の複合、併用調教の評価について

調教欄を見ているとトラック調教、坂路調教のどちらかに偏っている調教パターンと、2つを複合させて行う併用調教という調教方法があります。

結果から言うとトラック調教、坂路調教のどちらかに偏るよりも、バランスよく両方を使う併用調教の方が好成績を残しています。
その理由としては、トラック調教、坂路調教お互いの利点をうまく組み合わせることができるからです。

竹之内
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実際に短距離レースや小回り競馬場のレースなど、レース質によって坂路メインやトラックメインの方が良いパターンもありますが、トータルで見ると併用調教が最も勝率、複勝率が上がりやすいです。
調教パターンについては栗東、美浦トレセンのどちらにも関係することなので、しっかり押さえておきましょう。

まずトラック調教と言うのは簡単に言うと実践練習です。
コーナーの曲がり方や騎手の指示に従う折り合い、手前替えの練習やスタミナ強化など、総合的に競走馬としての走り方を訓練することを目的としています。

それとは逆に坂路調教というのは簡単に言うと筋トレです。
瞬発力やダッシュ力などの基礎能力の底上げ、坂を駆け上がって辛くなっても追い込める精神力の強化が主な目的です。
また坂路調教はスタートしてから全力で走らせるので、トラック調教のように折り合いも必要ありません。
そのため競走馬が持っている爆発力を呼び起こすことも期待できます。

併用調教の追い切り本数の基準について

ここで調教のパターンとしてトラックメイン、坂路メイン、併用調教などの追い切り本数の基準について簡単に書いてみようと思います。

一般的に追い切り本数というのは中1週は1本、中2週は2本中3週からは状況によって3本や2週に渡って1本など大きく追い切り本数は変わります。

中1,2週の場合にはレース経験を忘れないため、または臨戦態勢を崩さないために1週で1本が標準として考え、それよりも多いのであれば強めの調教、それよりも本数が少ないなら軽めの調教という判断をしています。

竹之内
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ここでいう併用調教というのはトラック調教と坂路調教が半分ずつの本数であれば、間違いなく併用調教の部類に入るのですが、トラック調教2本で坂路1本などの場合は判断が難しいですね。

併用調教と見なせる基準としてはトラック、坂路調教での追い切り本数が5:5、4:6や6:4などの範囲、もしくは7:3や3:7でも併用調教と見なしてもいいかと思います。
それ以上の偏りがある調教パターンであれば意図的にトラック調教や坂路調教で、瞬発力を狙っている場合や折り合いの練習をしているなど、調教師が調教で何を狙っているかを読み取ることが重要です。

また、併用調教でトラック、坂路共にバランスよく調教をこなしているのであれば、大きな不安点も無く調子がいいという判断にも使うことができます。

竹之内
竹之内
叩くのが目的のレース出走の場合は休養明けから叩きレースも含めて、本命としているレースまでの調教パターンから併用調教や偏った調教パターンかを見比べています。
厩舎によって調教パターンは大きく違うので、厩舎で行われているいつもの調教パターンから外れた時には、何を狙って調教しているのかを見ることが重要です。

坂路のように強い調教の場合は馬体に疲れが残りやすい、トラック調教だと掛かり気味になってしまい戦意を失うなど、馬それぞれの個体差の影響も大いにあるので、重賞などで調教評価する場合はベストパフォーマンス時の調教パターンと馬体重をしっかり見ることで調子を判断することができます。

馬体重について気になる方は、こちらからご覧ください。

調教の狙いと評価 栗東トレセン編 まとめ

今回は栗東トレーニングセンターの調教コースについて書いてみましたが、少しでも参考にできる部分はあったでしょうか?

現在美浦トレーニングセンターでも大規模改修をやっていて、栗東坂路よりも傾斜がきつく、高低差の高い坂路がもうじき完成予定です。

栗東の好成績の主軸は坂路なのは言うまでも無いので、今後美浦トレセンの坂路ができた時に、どのように東西の勢力図が変わっていくのかが楽しみですね。

調教についての記事に関しては今回が3つ目になるのですが、まだまだ書ききれていないことが多数あるので、今後も時間を見つけて調教についての記事は書き続けていこうと考えています。

競馬初心者の方でも取り入れやすくて結果が出やすいのが調教です。

気になった方はぜひ馬券の予想の際に、調教評価も入れてみてはいかがでしょうか?

マルチ