競馬初心者でも分かる調教の狙いと評価 美浦トレセン編
今回は以前に書いた調教の基礎知識編の続き、もう少し踏み込んだ調教についての狙いと評価方法について書いていこうと思います。
競馬の予想ファクターである調教ですが、競馬初心者でも非常に取り入れやすいファクターです。
本記事では前回の基本の部分で足りなかった部分の補足も含めて、美浦トレセンの調教コースの紹介を中心に解説していきたいと思います。
美浦トレーニングセンター、調教コースの狙いと評価のポイント
前回の記事では調教の定義についてから始まり、調教として記載される条件や調教コースの路盤についてなど調教を予想ファクターとして使う場合の基本を書いていきました。
今回の記事では美浦トレセン編ということで、美浦トレーニングセンターの調教コースの種類と違いについて解説していきます。
ぜひ調教を馬券購入の参考に調教を使う場合には、参考にしていただけると幸いです。
ここからは前回の記事を読んでいただいた前提で書いていきますので、まだ見ていない方はこちらからご覧ください。
美浦トレーニングセンターの調教コースとは
美浦トレセンは関東にあるトレセンで、茨城県稲敷郡美浦村にあります。
大きく分けて競走馬は関東馬と関西馬(栗東トレセン)と分けられていて、競走馬の成績だけでみると関西馬の方が高い成績になっているのが現状です。
そのため美浦トレセンは2021年現在も大規模な改修工事が行われており、詳細については後述致します。
ここからは美浦トレセンで行われている調教コースの種類と特徴について簡単に記載していきます。
美浦トレーニングセンター 北調教馬場
美浦トレセンは北と南に調教馬場があり、北調教馬場は基本的にあまり使われていない調教馬場で今回の改修工事が完了した際には取り壊すことが決まっている調教馬場です。
上記に貼っている美浦トレセンの北側にあるトラックコースが北調教馬場といい、3つの調教コースがあります。
トラックコースの内側から、
- 北調教馬場Aコース(北A)
- 北調教馬場Bコース(北B)
- 北調教馬場Cコース(北C)
となっており、()で囲まれている部分は調教欄に記載されている略称です。
北調教馬場Aコース(北A)とは美浦トレセンで行われる障害調教コースで1周1370m、幅員20m、美浦トレセンに所属する競走馬で障害レースに出走する競走馬は北Aコースで調教を積むことになります。
北調教馬場Bコース(北B)はダートの調教馬場で1周1600m、幅員20mとなっており、今まで私が調教欄を見ている中で使われていることがほぼないコースです。
そのため調教欄に載らないような1F15秒以下の軽い調整などで使われるのだと考えています。
北調教馬場Cコース(北C)は美浦トレセンの北調教馬場で一番使われるダートコースで、1周1800m、幅員20mとなっており、ダートの追い切り調教で稀に見ることがあるコースです。
このCコースでの実績として見てみると新馬戦、未勝利戦、1勝クラスなどの下位クラスの場合は、北Cコースで最終追い切りで勝っているケースが多々あるので、警戒する必要がある調教コースです。
北B、北C共に5Fの調教時計としては65秒前後が基準ですが、調教時計よりも突然北調教馬場を使ってきた場合には、その意図を汲むことが重要です。
美浦トレーニングセンター 南調教馬場
美浦トレセンで一番使われる調教馬場は南調教馬場です。
ほとんど調教欄で見るのは南側の調教コースで、豊富なコースの種類とトラックの広さが特徴です。
調教コースは4つのコースですが、1つのコースで2種類の路盤があるので、ここでは5つのコースとして紹介していきます。
- 南調教馬場Aコース(南A)
- 南調教馬場Bコース(南B)
- 南調教馬場Cコース内柵側(南芝)
- 南調教馬場Cコース外柵側(南P)
- 南調教馬場Dコース(南W)
このコースの種類も北調教馬場と同様にAコースが最内側でDコースに行くに従って、トラックの外側の調教コースです。
南調教馬場Aコース(南A)は南調教馬場の中で一番最内にあるコースで1周1370m、幅員25mの小回りのダートコースとなっています。
小回りのダートコースと言うことで追い切りではあまり使われない調教コースですが、私の主観では調子のいい馬の場合は南Aから坂路で最終追い切りなど、軽めの調教で好成績を出しやすいコースだと感じています。
南調教馬場Bコース(南B)はAコースの一段外周コースで、以前は南Wと言われていたウッドチップコースでした。
美浦トレセンの大規模改修によって2019年からウッドチップコースは後述するDコースに変更になったので、南Bはダートコースとなります。
一周1600mのダートコースで幅員20mということで、北調教馬場のBコースとサイズは同じ調教コースです。
このコースも追い切りではあまり見ないコースですが、ダート調教の中では現在一番使われるコースで厩舎によってはメインで使っている場合があります。
南調教Cコース(内柵側は南芝、外柵側は南P)は内柵側と外柵側で芝とニューポリトラックと分かれており、南芝は1周1800m、南Pは外柵側を走るので1周1858mです。
南芝は美浦トレセン唯一の芝コースで、特徴としてはいつもは右回りで使用されるのですが、関東で開催される中央競馬が東京と新潟の場合は左回りに変わります。
南調教馬場Cコース外柵側(南P) ニューポリトラック
南Pはニューポリトラック馬場で、美浦トレセンの調教コースの中でも比較的人気のコースです。
ニューポリトラックの特徴としては前回の記事の復習になりますが、路盤が柔らかく雨が降っていてもウッドチップコースと違い堅くならないという特徴があります。
ただ調教負荷で見るとウッドチップや坂路のように強くは無いので、最終追い切りできっちり負荷をかける厩舎はあまり使わない印象です。
調教タイムで見ると他の調教コースよりもタイムが出やすく、タイムだけの判断が非常に難しい調教コースとなっています。
基準タイムとしては5Fで66秒前後、ラスト1Fは12秒が基準で私は考えています。
皆さん知っている話ですが牝馬の場合は調教負荷を軽くすることによって突然激走する場合があります。
牝馬牡馬問わずに調教負荷が変わった時には注目してみましょう。調子が悪くて負荷の変更か、刺激を与えるために変えている場合なら買いですね。
南調教馬場Dコース(南W) ウッドチップ
南調教馬場Dコース(南W)は1周が2000mで幅員が30mと、とても広いウッドチップコースとなっています。
今までDコースはダートコースだったのですが、美浦トレセンの大規模改修によって2019年からトラック調教で一番人気のウッドチップがⅮコースへ変更しています。
今回のウッドチップコースの改修で最大の変更点としては、右回りだけだったウッドチップコースが左回りも可能になった点です。
南Wの調教タイムとしてはコースが改修以前よりも広くなり、トラックの外側のコースに変更されているのでコーナーも緩くなり直線が長くなります。
そのため改修以前の調教タイムよりもスピードが速くなりやすいので、当然調教タイム自体も早くなっています。
基準タイムとしては5Fで67秒前後、ラスト1Fが12秒を切るようなら要注目です。
美浦トレーニングセンター 坂路改修について
今回の大規模改修の目玉となるのが美浦トレセンの坂路改修です。
今までの美浦トレセンの坂路というのは前回の記事でもお伝えしたように、左回りの坂路で高低差は3段階の設定でした。
栗東トレセンの坂路に比べるとスタートしてからの400mは緩い勾配0,625%なので、坂路なのに負荷がかかりにくいことが栗東との成績格差が産まれる原因です。
そこで今回の改修によって助走区間の270mを地下に掘り下げた部分からスタートし、前半400mの勾配が0,625%だったのが勾配3%に変更されます。
それによって勾配3%の部分が計測区間が始まってからの750mとなるので、栗東坂路よりも高低差の大きい坂路ができる予定となっており、栗東坂路よりも負荷をより強くかけることが可能になります。
完成は2022年を予定しているので、完成が待ち遠しいです。
調教タイムをあまり重要視しない理由
今までの記事の中でも調教タイムについてはあまり記載もしておらず、参考程度にしか見ないと書いていますが、その理由としては調教する助手や騎手の体重がわからないからです。
レースの時の斤量は1キロ増えるか減るかでシビアに予想を変えるほど、斤量が及ぼす影響は大きいと考えているので、調教時の体重が乗っていない時点であまり重要視できないと考えています。
一般的に厩舎の調教助手などは1頭1頭担当が割り振られるので、今までの調教欄に助手と書いてあれば基本同じ人が乗っています。
調教映像からも乗り方や追い方、見た目のガタイなどで同一人物が乗っている場合は使えるかもしれませんが、人も体重が大きく増減することが多いので調教タイムを鵜呑みにすると痛い目に合うと思います。(実体験済み)
また、騎手などの体重制限をしている場合でも騎手によって体重差が5キロ以上あるので、今後調教欄に調教する方の体重が載っているのであれば、調教タイムを重要視するかもしれません。
調教を見る上で一番大事だと考えているのは、
- 調教パターンの変化(厩舎が何を考えているか)
- 調教する方が同一であれば、ラップ推移(成長または衰退の確認)
- 調教に騎手が乗っているか(騎手の本気度合いの確認、騎手との相性の確認)
- 調教映像から蛇行の有無や脚の運び、走法の変化(馬の仕上がりや前回の調教映像やレース映像からの変化)
を重要視しています。
調教で重要視する4つのポイント
調教パターンの変化については、厩舎の勝負パターンに合致しているかを見ていますが、簡易的に見る場合にはその馬のベストレースの時の調教パターンを確認してみましょう。
確認する際には最終追い切りだけではなく、レース出走までの間に
- どの調教コースで調教か
- 追い切りが何本か
- 追い方は馬なりか、強めか一杯か
- 単走調教か併走調教か
などに注目しています。
主にトラック調教と坂路調教の併用調教が主流になるのですが、坂路が多い時の方が好走する馬やきつめに調教する方がレースで好走する馬、それとは逆に坂路をすると疲れてしまって好走できない、軽い調教の方が好走するなどのパターンを見てみましょう。
ラップ推移については全体の調教タイムを見るのではなく、1F毎のラップがしっかり加速しているかと、その加速幅に注目しています。
特に芝の場合は加速力や瞬発力が非常に重要で、ダートのように年を取っても長く走ることは困難です。
馬によって早熟や晩成などの成長曲線があるように、その馬が上昇気味か下降気味かはラップの加速度によってわかると思っています。
調教に騎手が乗っている場合も狙い目で、新馬戦や未勝利戦、1勝クラスなどの下位クラスなどの場合は特に重要視しているポイントです。
私のように競馬を趣味として楽しんでいる愛好家よりも騎手の方のほうが遥かに馬を見る目はあります。
新馬の時から調教に乗っている場合や、途中からの乗り代わりであっても小まめに調教で乗っている場合は、調教師の方が期待しているか、騎手が自ら育てようとしているサインとして捉えています。
調教映像からわかること
調教映像の見方は人それぞれありますが、調教映像を見て力強く見えたり他の馬よりもダイナミックな迫力のある走りのように見えた場合は高評価でいいと思います。
出走馬同士の横の比較でも調子の良い悪いはわかりますが、最も効果的なのは同じ馬の今までの調教映像とレース映像との比較と呼ばれる、縦の比較です。
坂路の場合にはゴール前でもしっかり蛇行せずに走っているのであれば余力十分ですし、それに加えてラップもしっかり加速しているのであれば大きく成長していると判断できます。
またトラック調教の場合は単走でも併走でも、今までの走りと変わった点が無いかを確認し、大外を馬なりでダイナミックに回ってきている場合は、坂路同様に余力十分で準備万端なことが多い印象です。
調教映像で重要な走法や手前替えについて、気になる方はこちらからご覧ください。
調教の狙いと評価 美浦トレセン編 まとめ
今回は美浦トレセンの調教コース紹介を中心に、前回書けなかった部分の基礎知識の補足も書かせていただきました。
美浦トレセンに関しては大規模な改修、特に坂路が完成する2022年以降にどういう風になるのかが非常に興味があり、西高東低と言われているトレセンの評価がどうなるかが見ものです。
今後、栗東トレセンについてもできる限り早く記事を書こうと思っていますので、まずは競馬初心者の方でもわかるように美浦トレセンの調教欄から確認してみてください。
また、調教についてこれからもできる限り気付いたことはどんどん記事にしていきますので、レースとレースの谷間の調子を見る調教を、ぜひ普段使う予想ファクターに組み込んでみてくださいね。
栗東トレセン編についてはこちらからご覧ください。